量子の謎

 

量子論には、極めて常識に反する事例が存在します。

 

1、波束の収縮

 

 1個の光子が1つの銀河の星の上で発生し、その光が宇宙空間をたびして我々の目の網膜分子と衝突したとします。そのとき、光子は、小石のように、1つの経路を進んできたのでしょうか。 有名な2重スリット実験では、1光子は、空間的な広がりを持っているようにおもえます。 そこで、コペンハーゲン解釈では、1光子は、観測前は、空間的なひろがりを持ち、観測すると一瞬の内に1点に波動が収縮すると解釈します。
光子でなく、他の量子(電子や陽子)もシュレディンガー方程式に従って、移動にともなって波動が空間的に大きくなっていくとすると、宇宙から飛んでくる高エネルギーの陽子(10+20eV)も、非常に大きな横方向の波動となっていることになります。

 

 

 しかし、この陽子は、地球の大気や写真乾板に衝突すると、1ミクロン以下の大きさで1直線にそのエネルギーをうしなっていくのが観測できるのです。常識では、陽子は、衝突前はある程度の空間的広がりを持っていたとしても、地球レベルや、太陽系レベルや銀河レベルの空間的広がりとなっているとは思われません。
この1つの解決法は、シュレディンガー方程式に非線形項を付け加えることですが、どのような小さな非線形項も、深刻な矛盾をきたすことが、ハイゼンベルクにより証明されています。しかし、確率的な非線形効果なら、ハイゼンベルクの証明を逃れることが可能です。
   
   
 
2、EPRパラドックス  

 

 EPR = アインシュタイン・ポドロフスキー・ローゼンの論文(Phys.Rev.47(1935)777)

 

 図のように、2個の同種類の量子(2光子か2電子など)A,Bが左から飛んできて、中心で衝突し相互作用をして、右に飛び去ったとしよう。
ここで、右上がQ1,右下がQ2と呼ぼう。これを粒子としてみれば、Q1,Q2は、AかBであり、Aを追跡できれば、Q1かQ2に行くことがわかるだろう。所が、粒子でなく波動だとみれば、2つの波動は中心で重ね合わさったために(エンタングル状態)、Q1,Q2をA,Bに指定できなくなる。ここで、最初、A,Bは、ある性質をもっており、その性質(スピンと呼ぶ)が、Aは、+1、Bは、-1だとしよう。A,B全体では、0であり、これは衝突前後でかわらない保存数としよう。
この時、Q1,Q2は、スピンの性質はどうなっているだろうか。全体で0で衝突に関係なく一定なので、1方が+1なら、他方は、-1である。コペンハーゲン解釈では、一方を「測定」しないかぎり、他方は決まらず、一方を測定して、+1なら、一瞬で他方は、-1になるというのである。

 

これが常識に反するのは、Q1,Q2の粒子を反対方向に放出して、銀河の彼方に遠ざかった時、Q1を測定すると、即座に銀河の彼方のQ2のスピンが決定されるというのである。EPRはこれに異議をとなえ、量子論は不完全だと主張しました。当然、衝突後直後から、づっとスピンの性質は決まっており、ただ、銀河の彼方に離れたとき、測定しただけで、最初から決まっていたという隠れた変数理論もありました。1950年代まで、この問題は哲学的問題と考えられておりましたが、ベル(J.S.Bell 1964)が、ベルの不等式を発見し、その後の実験で、隠れた変数は存在しないということが実験で証明されたことになっております。
 しかし、これは、まことに不可解なことです。量子論は、実験結果を導出するたんなる、しかもかなり強力な数学的方法でありますから、どこかに、より自然な理論があるものと思われます。